11月9日夕、東京国際映画祭がクロージングを迎え、観客賞の発表と授賞式が行われました。既報の通り、今年はコロナ禍のため、コンペティション、アジアの未来、日本映画スプラッシュというコンペティティヴな3部門は、TOKYOプレミアに統合。したがって審査員はなく、観客による投票で競う観客賞のみとなり、大九明子監督、のん主演の『私をくいとめて』が選ばれました。
今年は海外からゲストが来日することが不可能なので、必然的に日本映画にフォーカスされた開催となりました。日本映画は新作をTOKYOプレミアと特別招待枠で紹介された他、ジャパン・ナウで深田晃司監督の特集が組まれ、ジャパニーズ・アニメーションでアニメの新作が、日本映画クラシックスでデジタルリストアされた山中貞雄監督の作品などが上映されました。
石坂健治シニア・プログラマーのインタビューにある通り、来年から再びコンペティティヴな部門を復活させるのか、それとも是枝裕和監督が長年提言してきたように、トロント国際映画祭のようなショーケース的な部門のみにするのかは、これから内部の話し合いで決定されることでしょう。が、どこの映画祭もコンペティティヴな部門が増える傾向にある現状を踏まえると、クロージングの華である授賞式をまったくやめてしまうとは考えにくいように思います。
私的には東京フィルメックスを重点的にフォローしたため、東京プレミアのシー・モン監督『アラヤ』、エドモンド・ヨウ監督『Malu 夢路』、レザ・ドルミシャン監督『ノー・チョイス』、ワールド・フォーカスのフェルナンダ・パラデス家督『息子の面影』、ラヴ・ディアス監督『チンパンジー属』が見られた程度で、見逃した映画が多く、とても残念でした。来年はもう少し時期をずらして開催していただきたいと切に願います。
今年の変則的な開催で結果的に印象が薄れてしまいましたが、TIFFが大きなターニングポイントを迎えていることは確かです。これからどういう映画祭を目指していくのか。東京フィルメックスとのタッグで、プサン国際映画祭への対抗軸を作れるのか。問題山積のTIFFですが、コロナ禍が、新たなプラットフォーム作りを考えるきっかけになったことを祈ります。
写真(上):観客賞の大九明子監督と主演ののんさん。©2020 TIFF
写真(下):東京フィルメックスはペーパーレスだったが、TIFFはまだ投票用紙が使われていた。