cannes_p_2018_07_01_0219日夜、授賞式が行われ、是枝裕和監督の『万引き家族』が見事パルム・ドールを受賞しました。前のレポートでも触れましたが、上映後の反応が予想以上で、その高評価は最後まで崩れることはありませんでした。『楢山節考』と『うなぎ』でパルムを2度受賞している今村昌平監督が、最もパルムを期待していた『黒い雨』では予想以下の小さな賞しか取れなかったことを思い出すと、賞の行方というのは運のようなもの、是枝監督は7回目のカンヌで、その運を逃さずに掴んだということだと思います。

写真はパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督

 

<トランプの米国描くスパイク・リー監督の『ブラック・クランスマン』>

スパイク・リーの『ブラック・クランスマン』は、潜入捜査担当の黒人警官(デンゼル・ワシントンの息子のジョン・デヴィッド・ワシントン)が、人種差別主義集団ク・クラックス・クランのメンバーになり、ついには支部長にまでなってしまうという実話の映画化。もちろん黒人の姿では集会に行けないので、その部分は同僚のユダヤ人警官(アダム・ドライヴァー)が担当しています。舞台は70年代ですが、リー監督はトランプ政権下の今のアメリカを描いているのだと強調していました。

 

審査員賞の『カペナウム』は、子沢山の貧乏家庭に生まれたゼイン少年が、まだ少女の姉がお金で嫁に出されたのに反発して家出し、エチオピアからの不法移民のシングルマザーに助けられ、彼女が働いている間、赤ちゃんの子守をすることになる、という作品。主人公を演じたゼイン少年は、本物のストリートキッドで、彼の自然な演技が光っていました。

 

ゴダール監督の『イメージの書物』にスペシャルパルム>

授賞式後の記者会見でケイト・ブランシェット審査員長の話を聞くと、最後まで数本が残って、審査が難しかったということでした。おそらく『万引き家族』、『ブラック・クランスマン』、『カペナウム』で賞が争われ、『万引き家族』が総合的に高得点だったのだと思います。そう考えると、『カペナウム』の審査員賞が例年より大きな扱い(3番目)になった理由が分かります。

 

また、他の作品とは別格ということで、カンヌの歴史初のスペシャル・パルム・ドールがジャン=リュック・ゴダール監督の『イメージの書物』に授与されました。

 

 

【受賞結果】

パルム・ドール:『万引き家族』監督是枝裕和

グランプリ:『ブラッククランスマン』監督スパイク・リー

審査員賞:『カペナウム』監督ナディーン・ラバキー

男優賞:マルチェロ・フォンテ『ドッグマン』監督マッテオ・ガローネ

監督賞:パヴェウ・パヴリコフスキ『冷戦』

脚本賞:アリーチェ・ロルヴァケル『ラザロのように幸福』

    ジャファル・パナヒ『3つの顔』

女優賞:サマル・イェスリャモヴァ『アイカ』監督セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ

スペシャル・パルム・ドール:『イメージの書物』監督ジャン=リュック・ゴダール

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短編パルム・ドール:『オール・ジーズ・クリーチャーズ』監督チャールズ・ウィリアムズ

次点:『オン・ザ・ボーダー』監督ウェイ・シュンジュン

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カメラ・ドール:『少女』監督ルカス・ドント(ベルギー)

写真は上から順にグランプリのスパイク・リー監督、審査員賞のナディーン・ラバキー監督、男優賞のマルチェロ・フォンテさん、監督賞のパヴェウ・パヴリコフスキ監督、脚本賞のアリーチェ・ロルヴァケル監督、脚本賞のジャファル・パナヒ監督に代わって賞を受けた娘さん、女優賞のサマル・イェスリャモヴァさん、短編パルム・ドールのチャールズ・ウィリアムズ監督と、次点のウェイ・シュンジュン監督、カメラ・ドールのルカス・ドント監督と主演の少女を演じたヴィクトル・ポルスターさん



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