新「シネマに包まれて」

字幕翻訳家で映画評論家の齋藤敦子さんのブログ。国内外の国際映画祭の報告を中心にシネマの面白さをつづっています。2008年以来、河北新報のウェブに連載してきた記事をすべて移し、新しい装いでスタートさせました。

2017年11月

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1125日夜、授賞式とクロージング作品のアッバス・キアロスタミ監督の遺作『24フレーム』の上映が行われました。実は、この作品は5月のカンヌで先に見ていたので、私は授賞式前に開かれた審査員記者会見にのみ出席しました。


 今年は最優秀作品賞が2作、それも同じインドネシアの女性監督作という特例的な結果となり、審査がかなり割れたことを思わせました。


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 モーリー・スリヤ監督の『殺人者マルリナ』は、夫が死に、自分を襲った強盗たちを殺害したマルリナが、友人の妊婦と離れた町の警察署へ行く旅を、西部劇仕立てで描いたもの。ガリン・ヌグロホ監督のアイデアを元にしたフェミニズム映画でした。アミラ・アンディニ監督の『見えるもの、見えざるもの』は、
10歳の少女タントリと双子の弟タントラが主人公。弟が脳障害で意識不明の寝たきりになったことで、姉はそれまで見えなかったものが見えてくるという、バリ島の伝説を元にした幻想的な映画でした。アンディニ監督はガリン・ヌグロホ監督の娘で、ヌグロホ監督の影響なのか、それともインドネシアに固有のものなのか、テーマも雰囲気もまったく違う2本に共通の時間の流れのようなものを感じました。


 学生審査員賞の『泳ぎすぎた夜』は、フランスのダミアン・マニヴェル監督と五十嵐耕平監督の共同監督作。魚市場で働く父親となかなか会えない少年が、市場へ父親を訪ねていく1日を描いたもの。共同監督というと、意見の対立やテイストの相違があったりするものですが、この二人は完璧に一致したようで、その完璧さが作品の長所ではなく、短所になっているように私は感じました。映画にもっと隙間が開いていて、見る側の思いが入り込めたらもっとよかったと思います。


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 私が一番好きだったのは、台湾の新鋭ホァン・シー監督のデビュー作『ジョニーは行方不明』でした。台北に出てきてホテルの受付で働き始めた娘、同じアパートに住む少年、アパートの屋根の修理を頼まれる何でも屋の青年という3人を主人公に、台北という大都会で孤独を感じながら暮らす3人の人生が交差し、ふれあう様子を描いていきます。題名は、娘が買った携帯にジョニーという男宛に見知らぬ人から電話が掛かってくることから。私も経験がありますが、監督の友人に本当にあった出来事で、友人は次第にその見知らぬ相手に親近感を持ったのだそうです。侯孝賢のアシスタントを務めただけあって、家族の食卓の描写などに侯監督の影響が見られましたが、広く開いた空間にゆったり流れていく時間が心地よい、新人離れした作品でした。

 

【受賞結果】
●コンペティション部門

最優秀作品賞

『殺人者マルリナ』監督モーリー・スリヤ(インドネシア)

『見えるもの、見えざるもの』監督カミラ・アンディニ(インドネシア)

 

学生審査員賞

『泳ぎすぎた夜』監督ダミアン・マニヴェル、五十嵐耕平(フランス・日本)

 

観客賞

『ニッポン国VS泉南石綿村』監督 原一男(日本)

 

●タレンツ・トーキョー・アワード2017

I wish I could HIBERNATE』(ピュレヴダッシュ・ゾルジャーガル/モンゴル)

 

スペシャル・メンション

Doi Boy』(スパッチャ・ティプセナ/タイ)


【写真(上)】
今年の受賞者と審査員。前列左から受賞者のカミラ・アンディニ、モーリー・スリヤ、五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル、後列左から審査員のエレン・キム、國實瑞恵、原一男、ミレーナ・グレゴール、クラレンス・ツィ(敬称略)
【写真(中)】
今年のタレンツ・トーキョーの講師と受講者。中央左寄りで賞状を持っているのがスパッチャ・ティプセナ(左)とピュレヴダッシュ・ゾルジャーガル(右)
【写真(下)】
『ジョニーは行方不明』のホァン・シー監督

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 昨年は仕事が重なって、あまり熱心に通えなかったのですが、今年は上映された作品のほとんどを見ることができました。これは毎年感じることですが、作品選定に様々なしがらみが絡む東京国際映画祭と違って、東京フィルメックスは林加奈子ディレクター、市山尚三プログラム・ディレクターの映画に対するビジョンの確かさが作品選定に(運営にも)反映され、見応えのあるラインアップになっていました。
 写真は上からオープニング作品『相愛相親』の舞台挨拶でのシルヴィア・チャン監督、『シャーマンの村』のユー・グァンイー監督、『氷の下』のツァイ・シャンジュン監督、『天使は白をまとう』のヴィヴィアン・チュウ監督です。

 今年特に魅力を感じたのは中国映画でした。オープニングのシルヴィア・チャン監督の『相愛相親』は、定年を目前にした教師(シルヴィア・チャン)の母親が死に、遺骨を故郷の墓に眠る父親と合葬してやろうとするが、故郷には父親の元妻がいて、墓を掘り返すことを絶対に許さず、テレビ局に勤める教師の娘がこの事件を報道しようとしたことから大騒ぎになるというストーリー。親、教師(子)、娘(孫)の3世代3組の愛と、親子の愛がテーマ。最初は激しく対立するものの、次第に互いを理解するようになり、最後は和解と前進で終わるという前向きな商業映画。私的には、主人公の夫を演じた映画監督の田壮壮の自然な演技がとてもよく、彼に目を付けたシルヴィア・チャンはさすがだと思います。

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 コンペのツァイ・シャンジュン監督『氷の下』は、中国東北部の辺境の町で、公安のタレコミ屋をして生活している男が、殺人事件の嫌疑をかけられて、アムール川の対岸にあるロシア側の町に逃亡し、そこで謎の美女に出会うというフィルム・ノワール。市山ディレクターとのインタビューにもある通り、ストーリーがわかりにくいのですが、密売で儲けている男たちの荒んだ雰囲気や、警察の腐敗といった中国社会の暗部が見事に活写されていました。ちなみに題名は、現地にロケハンに入ったツァイ監督が、冬、雪原だったところが春になって雪が溶けると、ゴミの原に変わっていたことから、『氷の下』と付けたのだそうです。映画のテーマを暗示するように、冒頭ゴミをつつくカラスの映像から始まるのはそのためでしょう。

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 ユー・グァンイー監督の『シャーマンの村』は、ユー監督が一貫して撮り続けてきた中国東北部の人々の記録で、故郷の村のそばに住むシャーマンたちの生活を4年以上に渡って追ったもの。医療設備のない辺境では、シャーマンの祈祷が薬代わりになっているそうで、祈祷で病人の妻が霊媒にようになっていく様子や、シャーマン同士の生々しいやりとりが捉えられていました。監督によれば、シャーマンは一般的には少数民族だが、ここでは漢民族で、それも百年ほど前から始まった、わりと新しい風習だそうです。問題提起というよりは記録が目的で、社会派の原一男監督は“突っ込みが足りない”と評していました。

 3本目のコンペ作品シュー・ビン監督の『とんぼの眼』は、尼僧の修行をしていた娘が寺を出て働き始め、ある男に出会う、男は娘が好きになるが、事件を起こして刑務所に入り、出所後、娘を探すが見つからず、人気者のネットアイドルが娘ではないかと疑い始める、というストーリー。といっても、すべてが実際の監視カメラの映像だけで組み立てられているのでストーリー性は希薄で、ショッキングな事故の映像に目を奪われてしまいました。ここまで世界が露わになっているという現実にゾッとする、どちらかといえば映像アート作品です。

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 特別招待枠で上映されたヴィヴィアン・チュウの『天使は白をまとう』は、中国屈指のリゾート地、海南島の浜辺のモーテルで働く家出少女を主人公に、地元の有力者による少女の暴行事件を通して、今の中国社会のひずみを描いたもの。砂浜に建てられた巨大なマリリン・モンローの像を少女のあこがれのアイコンとして使ったり、監督2作目ながら、すでにプロデューサーとして実績のあるチュウ監督の洗練されたテイストの完成度の高い作品でした。

 もう1本、中国を代表するドキュメンタリー作家ワン・ビン監督の『ファンさん』が特別招待作品として上映されました。中国南部の村で、アルツハイマーで寝たきりになったファン(方繍英)さんが亡くなるまでを撮ったもので、ファンさんというより、ファンさんの死をめぐる家族の記録。ファンさんを見守りながらも、枕元で葬式の話を始めたり、裏庭で博打をしたり、川で魚を捕ったりする家族に、生々しい人間の生を感じました。今年のロカルノ映画祭金豹賞受賞作です。

(太字は東京フィルメックスの上映作品です)

-韓国はどうですか?

 市山:いまだにホン・サンスとか、ポン・ジュノとか、50歳前後の人たちががんばっていて、それを突破する才能はなかなか出てこないようです。去年、フィルメックスでやったユン・ガウン監督の『私たち』は新人の作品としてはよく出来ていました。あの人なんかが今後化けるかどうか。

-カンヌは中国よりは韓国の方が多かったりしますね。

 市山:今年はポン・ジュノとホン・サンスで、若手はいなかった。去年はヨン・サンホの『新感染ファイナル・エクスプレス』というのが話題になりましたが。

 -ミッドナイト上映で。
 市山:ああいう、娯楽系の人で面白い人はいるんですけど。

-ナ・ホンジンの『哭声』とか。
 市山:去年のカンヌは『哭声』、『お嬢さん』、ミッドナイトで『新感染』。

-えぐい映画ばっかり(笑)。

 市山:『新感染』のヨン・サンホ監督なんかは若手といえば若手で、前に撮った『我は神なり』という映画は結構地味な話で、田舎の閉鎖された嫌な感じというのを露骨に出してたんだけど、アニメで作らなくてもいいじゃないかという映画なんです。おそらく本人は実写よりもアニメの方が好きなんでしょうけど。

-あの人は映画のセンスがいいと思いました。

 市山:『我は神なり』みたいな映画を実写で撮ったら、ひょっとしたらコンペに入るようなものができるかもしれない。かなり社会派の人ですから。

-西アジアはキルギスの『馬を放つ』だけですか?

 市山:結局イランがなかったし、イスラエルもなし。イランはカンヌのある視点賞を受賞したモハマッド・ラスロフの映画が話題にはなったんだけど、特別招待で上映枠を確保するのが難しく、かと言ってコンペでやるにしては結構本数を撮ってる人だし、今さらという感じもあり、残念ながら見送りました。

-イランは今低迷している気がするんですけど。

 市山:応募も山のように来るんですけど、アスガー・ファルハディもどきばっかりなんです。

-それは石坂さんも言ってました。ファルハディの存在が大きいというか。

 市山:1本、アリレザ?ショジャヌーリというキアロスタミの映画もプロデュースしている人がいて、元々俳優なんですが、彼が久々に出演している映画がありました。ヒロインの父親役でギャングに殺されるんです。その名誉を回復するために、ヒロインが最後にギャングの一味に復讐するという話で、女の人が銃をがんがん撃ったりする。ギャングのボス役をフィルメックスで上映した『メン・アット・ワーク』という映画の監督マニ?ハギギが演じ、結構こてこての芝居をやってて面白かった。ミッドナイト・セクションがあったら、やりたいなとは思いました。

-ミッドナイト・セクションを作るわけにいかないですよね、スクリーンがないから。

 市山:朝日ホールとレイトショーだけでやるというのは方針としてはいいと思うんですけど、そういう変なものが落ちていく。

-遊びが出来ないですね。でも朝日ホールから出られないでしょう?

 市山:以前、森崎東監督作品のオールナイトを 六本木ヒルズで上映したことがありましたが、別会場でやるという方法しかありません。ただ、シネコンの一角を使ってとなると、映画祭をやってる雰囲気がどんどんなくなる。キャパ300とか400席の会場だと、たぶんいろんな作品が売り切れて、チケットの争奪戦になったりするのも嫌なので。朝日ホールの大きさがちょうどいい。

-東京の映画館事情もありますね。映画祭をやる場所がない。

 市山:ジャ・ジャンクーの平遥映画祭は全部そういうことを考えて、キャパも身の丈に合ってるんです。屋外劇場はイベント用にでかく作ってるんですが、メイン会場は500席で、そこが満員になるようなことはあまりなかったようですが、100席の方のリピート上映だと結構満席になったりする。

-お客さんは町の人ですか?

 市山:ジャ・ジャンクーに聞いたら、半分は地元だけど、半分は北京とか上海とか、いろんなところからシネフィルが来ていると言ってました。

●原一男監督らしさあふれる「ニッポン国VS泉南石綿村」
-今年の目玉に原一男さんの長いドキュメンタリー『ニッポン国VS泉南石綿村』がありますが。

 市山:最初は事件の経過を手早く紹介していくんで、原一男作品らしくなく、訴訟を扱った普通のドキュメンタリーに見えます。しかし、見ているうちにだんだん人が浮かびあがってきて、途中から完全に原告団それぞれの人々にフォーカスされてくるというのがさすがです。確かに長い映画ですが、その長さは必然的なものだと思いました。

-対する中国にワン・ビンのドキュメンタリーがありますが。

 市山:『ファンさん』はすごく静かな映画です。静かなというと変だけど、おばあさんが寝たきりになってて、おばあさんの周りに家族がやってきて、あけすけにいろんな話をするんです。遺産相続とか。おばあさんはアルツハイマーなんで、聞いてるのか聞いてないのかわからない。家族の了解は取ってるとは思うんですが。

-カメラの回ってるところで遺産相続の話なんかして、家族は大丈夫だったんでしょうか。

 市山:その辺がある意味で中国だと思いましたね。日本では絶対にしゃべらないでしょうから。一見すると死を見つめるドキュメンタリーに見えながら、社会が浮き上がってくる。

-さすがワン・ビンですね。最後に他の日本映画について。

●Amazonプライムドラマ「東京ヴァンパイアホテル」
 市山:今年は原さんの他に園子温監督の『東京ヴァンパイアホテル』が特別上映です。これが貴重な機会になるのは、当面のところ劇場公開できないからです。これはAmazonプライムの連続ドラマで、映画版を特別編集したものですが、結末が全然違っており、全く別の作品と言えると思います。映画祭にはこの映画版を出していて、シッチェスとかプサンとか回っているんですが、Amazonとの契約で非営利上映はいいけど、商業上映はできませんという話になってるそうです。

-高校野球の『蔦監督』みたいですね。お孫さんの蔦哲一朗さんがおじいさんの池田高校野球部の蔦文也監督を撮ったドキュメンタリーですが、高野連の意向で商業上映ができないと聞きました。

 市山:将来可能性があるのかどうかわかりませんが、『東京ヴァンパイアホテル』は少なくとも現状では一般劇場では上映できないと聞いています。

-ではフィルメックスがチャンスですね。

 市山:このバージョンを見るにはこの機会しかない。レイティングを気にしなくていいので、むちゃくちゃやってます。

-園さんが映倫を気にする人のようには思えませんが。

 市山:園さんは気にしてなくてもプロデューサーが気にしますよ。少なくともR15にしてくれ、とか。

-コンペの『泳ぎすぎた夜』ですけど。

 市山:これはかなり特殊な映画で、フランスとの共同製作なんですけど、監督二人が個人レベルで作っている映画です。五十嵐耕平監督は芸大の卒業生で、修了制作に『息を殺して』という映画があって、ロカルノの新人コンペに入った。その同じ新人コンペに、『若き詩人』というユーロスペースで公開されたダミアン・マニヴェル監督の作品が入ってて、そこで出会って、お互いの映画を見て意気投合して、一緒に撮ろうということになったらしいです。

-共同監督って珍しいですね。

 市山:インタビューを読むと、絵作りはマニヴェル監督、子供の演出は五十嵐監督というように、ある程度役割を分けてやったようです。二人で脚本から何から全部作っていて、個人レベルの共同監督作です。

-なんとなくキアロスタミの『パンと裏通り』みたいな感じがしますが。

 市山:たぶん好きなんじゃないかと思います。基本的に子供が雪の中を歩いているだけの話なんで。かなり思い切った企画で、予算も全然かかってないとは思いますが、いきなりヴェネツィア(オリゾンティ部門)に入ったという意味で画期的です。


-日本の新人の作品は?
 市山:これが全然ないんです。たまたま応募がなかったのかもしれないし、僕らが見逃しているだけかもしれないですが。応募の数はむちゃくちゃ凄い。でも、見てて本当に厳しいです。中国もたくさん応募がありますが、ある程度レベルのいったものが来る。日本はレベルに達していないものが来たり、商業映画のコピーみたいなもので、しかも完全に失敗してたりとか、そういうのがすごく多い。

-撮る機会は増えている?
 
 市山:デジタルで安く撮れるんで。結構プロの俳優が出てたりする。助監督とかやってると人脈もできるんで、撮ろうと思えば撮れると思うんです。

-ヌグロホとかメンドーサのような親分肌の監督が若手を引っ張るみたいな環境にはできないんでしょうか?

 市山:親分肌というと違うかもしれませんが、芸大で教えている黒沢清さんや諏訪敦彦さんは結構若手にとっては頼れる存在だと思います。最近では青山真治さんが、ユーロスペースでレイトショー公開した多摩美大の卒業生(甫木元空監督)の『はるねこ』という映画をプロデュースしてましたけど。

-日本映画にもジャ・ジャンクーのような人が出てくるといいんですが。

                 (2017年11月10日、赤坂の事務局にて)

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 11月18日から26日まで、東京・有楽町の朝日ホールをメイン会場にして、第18回東京フィルメックスが開催されます。それに先だって、市山尚三プログラム・ディレクターに、今年の見どころや、各国の映画事情などをうかがってきました。(太字は東京フィルメックスの上映作品です)
 
●東南アジアが面白い
-昨年から、様々な映画をご覧になったと思いますが、気になった国や監督はありましたか?

 市山:今年の特色は東南アジアが多いことです。コンペにインドネシアが2本とフィリピンが1本、特別招待にタイの映画が入ってという具合に、例年だいたい入っても2本くらいのところを、4本も東南アジアが入っていますし、選ばなかった中にも面白い映画があった。特にインドネシアが2本入るというのは今までなかった。ガリン・ヌグロホの映画を特別招待で上映したのがこれまでの唯一のインドネシア映画でしたが、いきなり女性監督の映画が2本入っているというのは異例といえば異例なんです。
 
 東南アジアの映画が面白くなってきたというのは、ここ数年の傾向ですね。理由はいろいろあると思いますが、インドネシアに関しては、ヌグロホが学校の先生をやったり、自分でジョグジャ映画祭というインディペンデントの映画祭を主催したり、後進の育成を一生懸命やってるんで、彼の下にいた人たちが次々と出てきてるんじゃないかと思います。この『見えるもの、見えざるもの』のカミラ・アンディニはヌグロホの娘で、ヌグロホがプロデューサーをやっているし、モーリー・スリヤの『殺人者マルリナ』も、ヌグロホが原案なんです。

 若手にいろんな機会を与えようとする先輩の監督がいるということは大きい。フィリピンでは、ブリランテ・メンドーサやラヴ・ディアスが若手を育てているし、カンボジアではリティ・パンが映画学校を作ってからそれなりのクオリティの短編が登場し始め、タレンツ・トーキョーに毎年カンボジアの学生が入るようになってきた。まだ長編で活躍している人は少ないですが、数年後にはコンペにもカンボジアの作品が入ってくるのではないかという予感がします。象徴的な監督が1人いて、その人が後進の育成をやっている、というのが東南アジアに今起こっているような気がするんです。
 
-リティ・パンのお弟子さんというか、若手の短編は東京国際映画祭(TIFF)のクロスカット・アジアでやっていましたね。

 市山:初期のタレンツ・トーキョーに応募してきた頃は素朴な短編というか、正直言って他の国と比べられなかったのが、最近はどんどんクオリティがあがってきています。

●地域バランスに変化
-ジャ・ジャンクーが映画祭を始めましたが(平遥(ピンヤオ)臥虎蔵龍国際映画祭、臥虎蔵龍はアン・リー監督『グリーン・デスティニー』の原題)、映画学校とかは、やってるんですか?

 市山:今は教えてるかどうかわかりませんが、一時期中央美術学院の客員教授をやってました。客員なので、レギュラーには行ってないんですが、そこの学生をアシスタントとか助監督にして現場で実地教育をしたり、そういうのはやってました。中国映画はコンペに3本、招待作品に2本入っていますが、イラン映画や韓国映画がなかったり、今年は地域のバランスがかなり崩れています。
 
-韓国映画はない?

 市山:ないんです。去年はコンペに2本あったんで、韓国映画が全然ダメになったというわけではないと思いますが、今年は見た中に、他に選ばれている作品を上回るものがない。来年はあるかもしれません。結果的に中国が多くなりましたが、これは相変わらず面白いです。ジャ・ジャンクーのピンヤオ映画祭で僕は中国の1、2本目の監督のコンペティションの審査員をやりまして、結果的に『天使は白をまとう』という今年の招待作品が最優秀作品になったんです。11本中1本をのぞき、どれも審査員の誰かが押してて、とてもレベルが高かった。中国映画に関しては規制が厳しいとか言われながらも、皆いろいろ撮っています。

●検閲通った問題作
『天使は白をまとう』はヴェネツィアのコンペに出たんですね。

 市山:監督2作目でいきなりヴェネツィアのコンペです。アルベルト(バルベラ、ヴェネツィア映画祭ディレクター)がすごく気にいっていました。これはかなりセンシティブな題材を扱っています。中年の男が12歳ぐらいの女の子2人とモーテルで泊まるところから映画は始まります。実際に何があったかは画面には出てこないんですが、その後、娘の様子がおかしいんで、親が病院に連れていったら、性的に暴行された痕があるんで大問題になるんだけど、皆がよってたかってもみ消しにかかる。
 
-問題作ですね。

 市山:アルベルトは、このまま上映したら監督がジャ・ジャンクーみたいに活動停止処分になるんじゃないかと、すごく心配してたんですが、なんと検閲を通ったんです。本人に“なぜ通ったんだ”と聞いたら“ミラクルとしか言いようがない”と言ってました。
 
-検閲の基準が変わってきたんですか?

 市山:実際にはどうかわかりませんが、中国の人々の憶測では、こんなことで揉め事を起こすのはバカらしいということではないかと。本当に政府には刃向かっているような映画だったら話は別だけど、少女の暴行事件のようなものは実際にあるし、実際にあるものを映画にしたくらいなら、放置してしまえじゃないですけど、そこで上映禁止や活動停止処分にして、海外から抗議文が来るようなことになるくらいだったら通してしまえ、というようなことなんじゃないかと。
 
-ちょっと達観してきた? 昔は律儀に処分してましたが。

 市山:大人になったというと変ですけど。
 
-余裕が出てきたのかな、社会的に。

 市山:こんなことで突かれても体制は揺るがないという余裕かもしれませんけど、とにかく監督もびっくりというか、改変することなく。ピンヤオ映画祭でひとつ面白かったのは『ハヴ・ア・ナイス・デイ』というTIFFでやったアニメがありましたが、エンディングがベルリン映画祭で上映したバージョンとは変わってたんです。あれはヤクザの金を奪って皆が右往左往するという話で、最後に登場人物たちが一堂に会して最後の殺し合いみたいになって、ほとんど死んでしまうんだけど、最初に金を盗んだ若い男が息を吹き返して、札束の入ったバッグを持って逃げて行くと言うところで終わるんです。それがベルリンで見たバージョンだったんですが、今回見たら、若者が逃げようとしたら、パトカーがやってきて警察に取り囲まれて逮捕されて終わりになる。

●来年が楽しみ。中国のベテラン監督たち 
-“悪事は成就しない”という倫理的な制約でしょうか。検閲が変わってきても、ここはダメみたいなところがあるんでしょうね。でも大部変わった気はします。

 市山:ケース・バイ・ケースで本当にダメなときもあるんだけど、変にことを荒立てないで粘り強く交渉すれば融通がきくようになったとはいえるんじゃないでしょうか。
 
-中国のベテランはどうですか、ロウ・イエとかは。

 市山:ロウ・イエは新作が完成しているはずなんです。カンヌに出るんじゃないかと言われていたけど出てなくて、ヴェネツィアにも出てなくて、中国でもまだ公開されていない。もしかしたらベルリンを狙っているのかもしれないです。どちらかというと有名スターを使ったもので、娯楽映画と言えるのかどうかはわからないけど、大きな公開を目指している映画らしいです。それから、ワン・シャオシュエイは今撮ってます。ジャオ・イーナンという『薄氷の殺人』を撮った監督も今新作を撮ってます。だから、そういう意味で来年は豪華です。
 
-中国、ようやくですね。

 市山:もう一人、ジャ・ジャンクーも撮ってますよ。だから、来年は競争が激しい。
 
-市山さんがまたプロデューサー?

 市山:やってますが、製作資金はほとんど中国とフランスなので、日本の出資はそんなに大きくはありません。
 
-中国は今、経済的に潤っていて、お金がうまく回っているというようなことを聞いたんですが

 市山:映画製作の資金は出てくることは出てきます。ただ、宣伝費が高い。しかも、シネコンでかけようとすると宣伝費を最低これだけかけなきゃダメだというようなことを言われる。それを考えると、インディペンデントの映画は映画館にかけないで、ストレートで配信とかに回した方が利益が出るというんで、今、若手の監督は諦めている感じがあります。
 
-日本の単館ロードショーみたいな形態は、まだ出来ていない?

 市山:ジャ・ジャンクーがフランスの大手配給会社MK2と一緒になって作ろうとしているんだけど、時間がかかっていますね。協力的なところはあるけど、まだチェーンとして、ちゃんとしたものになっていないと言っていました。
 
-単館ロードのチェーンですか?

 市山:映画祭に出るような映画をかける映画館を、北京、上海などの主要都市に作って、全国で何館か分かりませんけど、都市部の人は少なくとも見られるというものを作ろうというのが主旨なんです。
 
-利益を出すのは難しそうですね。

 市山:外国映画を例外的に配給することが出来なければ無理だということは言っていました。
 
-それでMK2と一緒にやってるんですね。

 市山:外国映画40本のクォーター枠があって、ほとんどハリウッド映画か、日本映画だとドラえもんとかコナンとかのアニメで占められていて、ヨーロッパのアート映画が入る隙間がない。結局アートシアターを各地に作っても、中国映画の作家性の強いものしかやるものがなくて、編成が出来ないんです。それで、40本の外国映画枠の他に、アート系の映画の枠を認めてくれという要望を。

●アート系にもクォーター制?
-去年、クォーター制が廃止される噂があるという話を聞いたと思いますが。

 市山:去年は40本以上公開されたらしいです。『君の名は。』などが滑り込みで入って、結果的に去年公開された外国映画は40本超えているようです。たぶん去年は中国映画の成績が全体的にあまりよくなくて、それで要望があるんだったら、やってしまえみたいに、秋頃から突然外国映画が公開された。
 
-では今のクォーター制とは別に、アート系のクォーター制を作ろうと?

 市山:今、持ちかけているという噂です。それが成立したら、ヨーロッパ映画で番組編成ができるんで。今の編成だと番組が尽きてしまう。
 
-単館チェーンが出来ると中国の映画界の雰囲気が変わってくるでしょうね。

 市山:変わってくると思います。少なくとも発表の場がある。今だとシネコンに持っていっても、宣伝費が少ないと朝1回しか上映しないとか、そういう話になって、人も来ないし、宣伝費も戻ってこないことになる。下手したらイベント上映みたいな感じでやって、あとは配信の会社に売って、製作費を回収するということになる。
 
-回収できるんですか?

 市山:中国は人が多いんで、製作費が3千万くらいだったら回収は可能みたいなことは聞きました。
 
-円で?

 市山:日本円で3千万。今、若手監督に製作費がどのくらい集まってるか聞くと、みんな3千万と言う。たぶんその辺が配信で回収できる分岐点なんじゃないかと。それ以上だと配信で回収するのが難しくなるので、その中で収めなきゃいけない。
 
-3千万で収めれば何とかなる。

●何かと話題。大スター共演の「氷の下」
 市山:今回コンペでやるツァイ・シャンジュン監督の『氷の下』はむちゃくちゃお金がかかってます。これはホァン・ボーという大スターが主役、ヒロインもソン・ジャという人気女優で、大スター共演映画なんです。ところが、本当に話がさっぱりわからない。ヴェネツィアで審査員特別賞をとった『人山人海』のツァイ・シャンジュン監督の3作目です。
 
-わけがわからないまま、フィルメックスでやるんですか?

 市山:やります。というのも、現状ではこれが上映可能な唯一のバージョンだからです。フィルム・ノワールなので、ある程度話がわからなくてもいいというか、カメラがユー・リクウァイなので撮影がすごくいいし、半分ロシアで撮ってるんで、雰囲気も普通の中国映画と全然違って、無国籍的な感じがして、すごく面白いんですが、人間関係などがよくわからない。上海映画祭でワールド・プレミアされましたが、本来ならカンヌなどに入っててもおかしくない作品です。
 
 シュー・ビンの『とんぼの眼』は検閲を通そうと試みたようですが、現状ではまだ許可が出ていません。この映画はむちゃくちゃ画期的な作品で、何年間かにわたって監視カメラの映像を収集し、それをつなげて映画にしてるんです。映像の羅列かと思ったら、ちゃんとストーリーがある。要するに脚本家に脚本を書かせて、脚本に応じて監視カメラの映像を編集する。当然、登場人物は途中で何度も変わるんだけど、お構いなしに1つの物語をパズルみたいに組み合わせて作っている。
 
-ドキュメンタリーじゃなくて?

 市山:劇映画です。劇映画だけどキャスト費ゼロ。監視カメラの映像を使ってるだけなんで。
 
-大丈夫なんですか、そんなことして。

 市山:一応、顔がはっきり分かる人は、突き止めて、映画に使うからと許諾をとったと言ってました。途中で出てくるネットアイドルみたいな女の子は顔がわかるし、調べれば誰かわかると思うんだけど、普通に映ってるおじさんとか、どこまで突き止めたかわからないんだけど。新幹線が横転するシーンとか、飛行機が墜落したりするシーンが出てくるので、それが検閲が通っていない原因かもしれません。結果的にアンダーグラウンドのままになっている。平遥映画祭にも出したかったらしいですけど。
 
-映画祭で上映するのも検閲を通ってないとダメなんですね。

 市山:シュー・ビンは60代のアーティストで、初めて映画を撮ったんですが、この人は今、中央美術学院の副学長です。昔TIFFに来たニン・イン(『北京好日』で東京ゴールド賞受賞)がこの学院の映画学部長で、そこで短編映画祭をやってて、この間、僕が審査員をやったんですが、この映画を本当はやりたかったらしい。大学の副学長の新作でもあるし、でもさすがに出来ないと言ってました。大学のホールでも。
 
-パブリックなところでは映せない?

 市山:できるかもしれないけど、後でどんな問題が起きるかわからないし、本人に害が及ぶかもしれないということじゃないでしょうか。もう少し時間がたって、皆が忘れた頃にこっそりやる分には分からないかもしれないけど。ジャ・ジャンクーの『プラットホーム』も数年後になって学校のホールとかでやり始めましたから。
 数年前に例の中国インディペンデント映画祭が廃止に追い込まれましたが、あれなんかも映画館じゃないからいいということで、ドキュメンタリーやアンダーグラウンド映画を公然と上映していた。ところが、次第に映画祭が大きな注目を集めるようになり、手入れが入った。黙って静かにやってる分には見逃してるんだけど、それが目立ち始めると手が入ってくる。
 
-あの映画祭はアーティストが中心になってやってたとか。

 市山:北京郊外にアーティスト村があって、そこにリー・シェンティンというアーティストが自分の絵を売った資金などをもとにインディペンデント映画を支援するお金とかで基金を作り、上映会場まで作って、映画祭を始めたんです。
 
-捕まりましたよね。

 市山:捕まったのはジャ・ジャンクー作品の常連俳優だったワン・ホンウェイです。そのときフェスティバル・ディレクターだったんで。でも、何時間か拘束されて、“今年は開催しません”みたいな宣誓書に署名されられて、すぐ釈放されました。ちなみに、ワン・ホンウェイは『氷の下』に出てますよ。脇役ですけど。
 
『氷の下』のツァイ・シャンジュン監督はアート系の人?

 市山:演劇系です。『スパイシー・ラブスープ』とか、最近では『ラサへの歩き方 祈りの2400Km』を撮ったチャン・ヤンという監督がいて、彼も演劇人なんですが、彼の脚本をずっと書いてた人です。ユー・リクウァイはあの演劇グループと親しいんで、その縁でおそらくカメラマンをやってるんだと思います。
 
-中国はあと『シャーマンの村』という作品がありますね。

 市山:お馴染みユー・グァンイーの映画です。これ結構前から撮ってるんです。確か2作目のときに今シャーマンの映画を撮ってると言ってたんで、それが今出来上がったという感じで、面白いのはカメラのクオリティが途中で変わるんです。
 
-いいのに買い換えたんですね。

 市山:最初は『最後の木こりたち』みたいな安いカメラだったのが、途中からいきなりクオリティが上がるので、これは途中でカメラを買い換えたなと分かる。
 
-監督本人のしみじみとした変遷も感じられる(笑)。

 市山:途中でシャーマンの人も亡くなったりしながら、家族のことを撮ってるんで、こういう世界があるということが面白い映画です。
 
-その他に台湾が1本。

 市山:『ジョニーは行方不明』は侯孝賢の弟子のホァン・シー監督のデビュー作です。今年は台北映画祭には行ってなくて、基本的に山のように応募がくるその中から決めたんですけど、まだ2本くらいは検討してもいい映画がありました。
 
-TIFFで見た台湾映画は、私はちょっとという感じでした。

 市山:『仏陀+』ですか?
 
-こういう映画があってもいいなとは思いましたけど、のめり込むかといったらのめり込めない。台湾の人は面白く見られるかもしれないけど。

 市山:『ジョニーは行方不明』は『仏陀+』に比べるとある意味で普通の映画です。普通というと変ですけど。『仏陀+』の方が強烈だけど、こっちの方が真摯に撮ってるというか、ちゃんと撮りたいものをきちんとやってる感じがして好感が持てる。
 
-台湾の若手は上手だけど、もう1つ抜けたところがないというか、侯孝賢とか、蔡明亮に比べると。
市山:そこまでの人は出てきてない。それは長年の課題というか、2000年以降ずっといないです。

bokunokaerubasho
 
 映画祭の格を上げるためにプレミア度を優先せざるをえないコンペティションに比べ、長編3作目までの新人監督に限られるアジアの未来は、縛りが少ないだけ作品選定に自由があると言えます。今年5年目を迎え、ここで認められれば、<アジア三面鏡>の1編を監督する機会が与えられるという特典もできて、アジア各国の若手からの期待度もあがってきた、ということは石坂ディレクターとのインタビューにある通りです。東京で注目された若手監督が、ベルリン、カンヌ、ヴェネツィアといった大きな映画祭に進出して知名度をあげてくれれば、世界からの認知度がなかなかあがらない東京国際映画祭にとってもプラスになるはずです。

 では、今年の10本はどうだったかといえば、残念ながら、鮮烈な才能の発見には至らず、作品選定の難しさを感じさせられました。

 作品賞を受賞した藤元明緒監督の『僕の帰る場所』は、日本で暮らすミャンマー人家族が主人公。父親は居酒屋で働きながら家族を支えていますが、母親は日本になじめず、なかなか在留資格が得られないためにノイローゼ気味、ついには子供を連れて帰国することになります。すっかり日本の生活に馴染んでいた幼い兄弟は、言葉もうまく話せない、見知らぬ祖国に順応できるのか、という映画でした。登場人物はほとんど素人で、そのため1時間を超える長回しで自然な表情を追いかけたのだそうで、兄弟の生き生きとした反応やあどけなさが見事に描き出されていました。ただ、ミャンマー人家族の事情や彼らを取り巻く状況については、映画を見ただけでは、いまいちよく飲み込めませんでした。もう少し大きな視点から家族を捉えたら、日本とミャンマーをめぐる社会の違いや問題点がもっと見えてきたように思いました。まだ29歳と若い藤元監督の次回作に期待します。

 スペシャルメンションだったチョウ・ズーヤン監督の『老いた野獣』は、内モンゴルのオルドスを舞台に、都市化の波が押し寄せ、急速に近代化していく内モンゴル社会を、事業に失敗して自堕落な生活を送る初老の男と、父親に冷ややかな子供たちとの関係に仮託して描いたもの。草原の中に突然高層ビルが建ち並ぶオルドスの風景も驚きでしたが、砂漠の緑化政策で放牧が禁止され、羊を飼って生活していた人々が酪農に転向せざるを得なくなったという話も驚きでした。ところどころ表現不足なところもありましたが、主人公の男の魅力で最後まで見せてくれました。

 その他、前のレポートで紹介した2本のフィリピン映画以外のエントリー作品は、どれも無難にまとまってはいたものの、映画としての魅力に欠けていたように思いました。来年は、荒削りでも強烈な個性を持った、たとえばワールド・フォーカスで上映されたインドの『セクシー・ドゥルガ』やフィリピンの『アンダーグラウンド』のような、一目見たら忘れられなくなるような作品が見たいものです。

【写真】「アジアの未来」部門で作品賞を受賞した「僕の帰る場所」の受賞風景 (c)2017 TIFF

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