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 今年
30回目の記念の年を迎えた東京国際映画祭が、1025日から113日まで、TOHOシネマズ六本木ヒルズを主会場に開催されています。

 

 今年は、アジアの若手監督が作品を競う、アジアの未来部門を中心にレポートする予定で、映画祭開催直前にプログラミング・ディレクターの石坂健治さんにお話をうかがってきました。

 

―プサンからお帰りになったばかりということで、今年のプサンはいかがでしたか?

石坂:アジアの未来は、アジアのヤングシネマという意味で、プサンのニュー・カレンツという部門とかなり重なっているんですが、あちらも今年は10本、ワールド・プレミア8,インターナショナル・プレミア2で、同じだったんです。

 

●ワールド・プレミアが充実

―ニュー・カレンツの方が本数が多かったのでは?

石坂:前は12本くらいでした。TIFFがアジアの未来を始めてから、向こうもハードルをあげ、ワールド・プレミアにこだわるようになって、こっちもそれなら、ということで、おかげさまでワールド・プレミアを出してくださる方が増えてきたな、と感慨にふけっていたところです。10本中8本がワールド・プレミアだと、作り手たちがお披露目で力を入れてくるので、ゲストの数が多くなって、華やかになる分、マンパワー的なことも、こっちがかなりきっちりしなければいけない。

 

―やってくる人が増えると受け入れる側は大変ですね。

石坂:アジアの未来がこれだけプレミア度が高くなり、鮮度がよくなってくると、今後の課題でもあります。みんな授賞式まで残っていたいし、レッド・カーペットも歩きたい。

 

―人数が増えると、こっちの人手もいるし、お金もかかるということですね。

石坂:嬉しい悲鳴です。

 

―プサンは最近運営面でいろいろありましたが、ニュー・カレンツ以外のアジア映画は?

石坂:アジアの未来はようやくニュー・カレンツと拮抗するくらいになったかな、と思いますが、もう一方のパノラマ的な、TIFFではワールド・フォーカス、プサンではアジアの窓と呼ばれる部門は60本もあるので、ここはもういかんともしがたい。今年ワールド・フォーカスの中のアジア映画は14本ですから。

 

●ツー・トップが圧倒的なフィリピン

―去年から今年にかけての新発見というか、これはいいという国や人は、ありました?

石坂:相変わらずフィリピンが頭一つ抜けている感じです。ツー・トップのメンドーサとラヴ・ディアスが今年日本で商業公開されましたが、あの二人が三大映画祭をほぼ独占しているんで、若手にとってTIFFは、かなり狙い目なんです。プサンもそうなんでしょうけど。なので、応募の数は相当多いです。特にフィリピンは若手を対象にした映画祭の数も多いし、去年、TIFFでフィリピン映画2本、『ダイ・ビューティフル』と『バード・ショット』が受賞したことも効いているみたいで、フィリピンはツー・トップの圧倒的な存在感と、TIFFで若手が賞をとったことが大きい。

 

―頭一つ抜けているフィリピンを追う国とは?

石坂:インドは、ロッテルダムで賞をとった『セクシー・ドゥルガ』がワールド・フォーカスに出ていますが、90分の不条理劇で、ちゃんとできているアート系の作品です。

 

―中国は?

石坂:中国は中間層がふくらんできています。インディーズで反体制なものが今は厳しくなっていますが、国が豊かになってくると中間層がふくらんできて、ちゃんと国の許可もとるけど、結構とんがった内容のものもチラホラ出てきています。ベルリンのコンペに出た『ハヴ・ア・ナイス・デイ』という、北野武とジャ・ジャンクーを足して2で割ったようなアニメの実写ではできないような残酷描写とか。アジアの未来では『老いた野獣』というのも荒くれ親父の話です。

 


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