5月22日夜、主会場リュミエールでコンペ部門の授賞式が行われました(結果はこの欄の最後をご覧ください)。プレスの評価の審査員の評価が食い違うのは当然のことですが、その差が今年ほど大きかった年はないように思いました。
2度目のパルム・ドールを手にした『ダニエル・ブレイク』は、福祉行政の理不尽さを告発する社会派ローチの面目躍如の作品。昨年の『ディーパンの闘い』の移民というテーマ同様、社会的なテーマ性を持った作品がパルムを獲るという最近の傾向を示すものだと思います。
グランプリの「まさに世界の終わり」は、不治の病に罹った主人公が、長年疎遠だった家族に別れを告げにいくという物語を、ガスパール・ウリエル、ナタリー・バイ、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥというフランスのオールスター・キャストで描いたもの。デビュー以来、世界の注目を集めてきた期待の星のドランですが、いがみ合う家族というテーマも新鮮味がなく、演出も単調で、私はあまり感心しませんでした。
監督賞をムンジウとアサヤスの2人に、ファルハディの『セールスマン』に2つの賞を出すという変則的な結果は、審査員の中でかなり意見が分かれた結果だと思います。
コンペの中で私が好きだったのはジム・ジャームッシュの『パタースン』、ポール・バーホーベンがイザベル・ユペール主演でフランスで撮った『彼女』、相変わらずキッチュな映像で魅せるニコラス・ウィンディング・レフンの『ネオン・デーモン』、ギロディ的世界が炸裂するアラン・ギロディの『まっすぐ立つこと』でしたが、どの作品も見事に賞に絡みませんでした。こんな年もあるものです。
写真は見事2度目のパルムを手にしたケン・ローチ監督、右はプロデューサーのレベッカ・オブライエンさんです。
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